フィルムでは、レグナントはかなりおいしく使えたと思っているんだよね。
そうですね。ルイスが、自分の両親の仇であるネーナを殺すシチュエーションなんかは、一番の見せ場だったと思いますし、個人的にも大好きなシーンですね。
あれは、ルイスの狂気もうまく出ていたし、ルイス役の斎藤千和さんの演技も素晴らしかった。あの辺りは女の戦い。王留美が殺されるあたりから、物語もえらい流れになって行くし。物語の密度が濃くて「これを1話だけでやるのか!」って、脚本が上がって来たときには思ったんだよ。
中盤以降は本当にかなりの密度になってしまって。ノンビリやっていたわけじゃないけど、どうしてもそれを昇華するのに、どれだけ劇的にするかというとこをかなり苦心したね。レグナントも、その中でちゃんと変形を見せつつ、爪も使いつつという感じで。デザインをしているときは、爪の使い方にしてもいろいろアイデアを出しあって楽しいんだけど、いざフィルムの尺の中でそれをやろうとすると「これとこれは同時にできないよ」となるので、「細かくカットを割って頑張るか」と。
僕、実は、コンテを見たときは、ガンダムスローネドライを握りつぶしているのかと思っていたんですよね。でも、そのままクシャって潰すのかと思ったら、爪を突き刺していましたからね。ポジション的にはおいしいところをいただきました。強かったですし。リボーンズガンダムの次くらいには高性能な機体なんじゃないですか?
そうだよね、多分。そういう意味では我々二人はレグナントラブですよ。
『ガンダム00』はこんな感じで、映像化込みでデザイナーと密にやりとりができたし、かなり細かい設定も存在していて、今回のような企画をやろうと言った時にもわりと簡単にアイデアが出せるという良さがあったね。
デザイン的にも、結構自由度は高かったですよね。
デザイナーとこれだけ顔を合わせて打ち合わせしている作品が珍しい。打ち合わせの際には、全員集まってやっていたからね。そういうデザイナーと監督の関係を踏まえて、この連載は、ある意味僕らが楽しむ企画でもあるんだよね。「アイツ、何を描いてくるんだろう?」って、毎回楽しみになりそう。本当に、こういうガンダム側ではない部分にもスポットを当てられる企画が展開できたことはうれしい。……で、次は柳瀬君ですが、何を描くって言ってました?
アレじゃないですか? おそらく(笑)。
アレですか(爆笑)。そこまで愛があるんだ。
アレを描きたいんだけど、対談ってことでやめようかな……ということも言っていたので。実際に何を描かれるかはわかりませんが、凄く楽しみにしています。
ホント、楽しみですね。彼がどんなシチュエーションで何を描いてくるのか(笑)。
ルイスとネーナの対決シーン
セカンドシーズン 第21話
あと、エンプラスとレグナントで言えば、そもそも商品化しないだろうというところからデザインがスタートしているのが大きいよね(笑)。モビルスーツは商品化することを前提にしていたから、いろいろとデザイン的な制約があったんだけど、レグナントは制約を無視して大きいサイズでもいいということになって。エンプラスとレグナントは、「オレと海老川の夢だ!」とか言って、特に制約を考えずに自由に作っていった機体なんだよね。そういう意味では、劇中に登場した機体の中では、最も二人で揉んだんじゃないかな?
そうですね。一番監督の意見が入っているメカじゃないでしょうか。監督の要望に合わせて、こちらもいろいろとアイデアを出しあいましたよね。柳瀬さんの〈ガ・シリーズ〉が、商品化するという都合もあって、格好良くまとまっているので、その反動がレグナントには出ていると思います。
だから、もっといびつなモビルスーツにしようよとか言っていた。元々は、蝶や蛾のイメージでデザインが出てきているので、レグナントのMS形態は「もっと変な形にしようぜ」という話で盛り上がった記憶がある。
最初は、ルイスが乗るということで女性のラインを取り入れたデザインで描いたせいか、意外とバランスは良かったんです。だから、変形するとスラッとしたカッコイイ系になってしまって。そこをもっと、「憎しみの塊」みたいな仰々しい感じにしようと監督から意見がありまして。エンプラスはレグナントの試作機という設定ですけど、実際にデザインを考えた順番は逆なんですよね。まずはレグナントありきで、レグナントのデザインを固めてからエンプラスのデザインに取りかかっているんです。本編のもう一人の主人公・沙慈にとってのヒロイン・ルイスが乗る巨大モビルアーマー……という構図は、ガンダムシリーズにおいては定番ではあるんですが、定番の流れの中に埋もれるのは嫌だなと思って、シルエットでは目立つ形にしたいなとは思ったんですよね。