いよいよG-ROOMSも一巡して、海老川君に戻ってきたね。前回のリクエストに答えてくれてダブルオーライザーを描いてくれたんだけど、実は最初違うものを描こうとしていたんだよね(笑)。
そうですね(笑)。舞台は地上でGN-Xを描こうと思っていたんです。でも、せっかくネタを振ってもらえたんで、ダブルオーにしてみました。監督は「好きなほうでOK」とおっしゃってくれたじゃないですか? でもOガンダム、エクシアと続いたんで、ダブルオーをちょっと本腰入れて描いてみるのもいいなって思ったんです。
後ろから見たガンダムっていう構図もおもしろいよね。
シチュエーション的には本編の第23話「命の華」です。ソレスタルビーイング号へ向かうガンダムとプトレマイオスⅡですね。ダブルオーの版権イラストは他の媒体でも何度か描かせてもらっていたんですが、さすがに背面は無理でした。でもG-ROOMSのコンセプトなら描けると思いまして。ダブルオーをデザインしたとき、後ろからの密度って結構気に入っていて、どこかで描きたいなと思っていたんです。
G-ROOMSは企画としてかなり自由度があるからね。
企画のコンセプトが戦場写真的な視点ということも考慮して、ラフの時点では連邦の輸送艦からみたダブルオーっていうシチュエーションで窓枠も入れていたんですよ。
でも窓枠を入れると引いた絵になってしまうんだよね。そこで全体を見せようとすると、見せ方の収まりが悪くて、額縁のようになってしまう。
そうなんです。それならいっそのこと、窓枠をとってしまおうと思って、今回の絵になりました。
メインのダブルオーがこれだけ大きいからね。枠をとったことで、結果としてすごく臨場感のある絵になっている。細かいディテールもはっきりわかるしね。
ええ、今回はせっかくの機会なので、PG(パーフェクトグレード)に携わったときの基準でディテールを追加しています。あと、実は足裏のディテールはPGにはないものです。オーライザーにもPGでボツになったハッチが展開するディテールを描いていますね。
さすがに作画でこの密度は出せないから、こういう場でオリジナルのメカデザイナーが自由に描けるっていうのはいいよね。
そうですね。この企画ならではだと思います。
PGで果たせなかった夢があふれているね(笑)。ダブルオーがもう1回アップデートされているっていう印象を受けるなぁ。
それまでにHG(ハイグレード)と1/100スケールを経験してきましたが、PGは1/60という大きいサイズなので完全に新規でディテールを起こしているんです。一度、アニメ版のデザインありきでディテールをリセットして、再度加えた形になります。
そういえば、オリジナルのメカデザイナーがPGのデザインをしたのは初めてだよね。評判は良かったのかな?
昨年度のプラモデルでは、一番売上がよかったらしいですよ。
それはバンダイに大々的に言ってもらわないとね(笑)。それだけいい出来なのに、PGともなると自分では作れないのが残念だなぁ。キミはあれだけ働いているのに、よく模型を作る暇があるよね。
僕は仕事か模型かゲームしかやってないですから(笑)。
それはいい人生な気がする……。それに消費しているだけじゃなく、ちゃんとクリエイターとして世の中に発信しているもんね。デザインを発表して、それが商品になってそれを自分で買って作って楽しんでって……。
永久機関です(笑)。
GNドライヴだね(笑)。
今日はダブルオーのラフをいろいろもってきたんですよ。
青いダブルオーとか懐かしいね(笑)。これは黒いガンダムに憧れて描いてもらったんだけど、結局主役に見えなかった。ダブルオーは当初、エクシアの発展系で考えていたから、プロポーションはもっとエクシアに近い形だったんだよね。それをもっと細身で贅肉を削いだ形にしたいっていう話になって、パンクラスの船木誠勝選手をモデルにしようってことになったんだよね。
途中のラフでは、顔まで細くなっちゃったのもありましたね(笑)。
そうそう(笑)。初期段階は線が多いんだけど、これは模型用を想定して多めに描いてもらったんだよね。そこから、いかに作画に必要な線、立体を表わす線だけを残していくかっていう基準だった。
メカとしても、純粋な進化の形としてシンプルになり、線が整理されていくのは正しい流れですよね。
無駄な線をはぶいて、それでもデザインがわかるようにっていうことをしつこく言ったよね。で、それに巻き込まれた寺さん(寺岡賢司氏)が怒ると(笑)。でも言うだけ言ってすっきりして帰ると、翌日には線を減らしたティエレンの設定画をもってきてくれるんだ。まぁ結局、ティエレンのディテールが減るとさびしいって、作画のみんなは元の設定で描いてくれたんだよね。
線を減らすとティエレンらしさも減ってしまいますよね。
しかし完成までに、こんなにラフがいっぱいあったんだね。とくに海老川君に発注するときは、変なことばかり言っているからかな(笑)。 キミに発注する場合は、アバウトで幅のあることを言ったほうが、面白いデザインが出てくるんだよ。最初は「エーッ」って顔するんだけど、1週間ぐらいすると、すごくいいデザインが上がってくるパターン(笑)。海老川君のことは古くから知っているから、毎回このパターンで発注するんだけど、周りの人は「監督ヒドイ!」って顔をするんだよ(笑)。でもそういう発注の仕方をすると、想像していた以上ものが上がってくるから面白いんだ。そういう意味では、実直・堅実な柳瀬君と、海老川君のコンビは、うまくバランスが取れているんだって感じるね。
海老川兼武(えびかわ・かねたけ)
メカニックデザイナー。『ガンダム00』では、ガンダムエクシア、ダブルオーガンダムなどのソレスタルビーイングメカを中心に担当。他に『ヴァントレッド』シリーズや『フルメタルパニック!』シリーズなどのメカデザインを手掛けている。
GN-0000+GNR-010ダブルオーライザー
ダブルオーガンダムと、支援機であるオーライザーがドッキングした形態。ダブルオーガンダムはかねてツインドライヴシステムの不調が指摘されており、これを支援機によって調整するという、急場しのぎの解決策がとられた。だがロールアウト直前の実験では、粒子生産量、粒子放出量とも、通常の290%を超えるという恐るべき数値を記録している。それゆえ艦船や要塞をも両断する巨大ビームサーベル、ライザーソードなどが使用可能になるなど、モビルスーツの常識を覆す性能を発揮した。だが本機の目的は戦闘能力だけではなかった。イオリアは、ツインドライヴのトランザムバーストで生み出される高濃度GN粒子によって、人類のイノベイター化を促すことを目指していた。つまり、ダブルオーライザーは人類を革新に導くガンダムだったのである。
■設定画 ダブルオーライザー
いよいよG-ROOMSも一巡して、海老川君に戻ってきたね。前回のリクエストに答えてくれてダブルオーライザーを描いてくれたんだけど、実は最初違うものを描こうとしていたんだよね(笑)。
そうですね(笑)。舞台は地上でGN-Xを描こうと思っていたんです。でも、せっかくネタを振ってもらえたんで、ダブルオーにしてみました。監督は「好きなほうでOK」とおっしゃってくれたじゃないですか? でもOガンダム、エクシアと続いたんで、ダブルオーをちょっと本腰入れて描いてみるのもいいなって思ったんです。
後ろから見たガンダムっていう構図もおもしろいよね。
シチュエーション的には本編の第23話「命の華」です。ソレスタルビーイング号へ向かうガンダムとプトレマイオスⅡですね。ダブルオーの版権イラストは他の媒体でも何度か描かせてもらっていたんですが、さすがに背面は無理でした。でもG-ROOMSのコンセプトなら描けると思いまして。ダブルオーをデザインしたとき、後ろからの密度って結構気に入っていて、どこかで描きたいなと思っていたんです。
G-ROOMSは企画としてかなり自由度があるからね。
企画のコンセプトが戦場写真的な視点ということも考慮して、ラフの時点では連邦の輸送艦からみたダブルオーっていうシチュエーションで窓枠も入れていたんですよ。
でも窓枠を入れると引いた絵になってしまうんだよね。そこで全体を見せようとすると、見せ方の収まりが悪くて、額縁のようになってしまう。
そうなんです。それならいっそのこと、窓枠をとってしまおうと思って、今回の絵になりました。
メインのダブルオーがこれだけ大きいからね。枠をとったことで、結果としてすごく臨場感のある絵になっている。細かいディテールもはっきりわかるしね。
ええ、今回はせっかくの機会なので、PG(パーフェクトグレード)に携わったときの基準でディテールを追加しています。あと、実は足裏のディテールはPGにはないものです。オーライザーにもPGでボツになったハッチが展開するディテールを描いていますね。
さすがに作画でこの密度は出せないから、こういう場でオリジナルのメカデザイナーが自由に描けるっていうのはいいよね。
そうですね。この企画ならではだと思います。
PGで果たせなかった夢があふれているね(笑)。ダブルオーがもう1回アップデートされているっていう印象を受けるなぁ。
それまでにHG(ハイグレード)と1/100スケールを経験してきましたが、PGは1/60という大きいサイズなので完全に新規でディテールを起こしているんです。一度、アニメ版のデザインありきでディテールをリセットして、再度加えた形になります。
そういえば、オリジナルのメカデザイナーがPGのデザインをしたのは初めてだよね。評判は良かったのかな?
昨年度のプラモデルでは、一番売上がよかったらしいですよ。
それはバンダイに大々的に言ってもらわないとね(笑)。それだけいい出来なのに、PGともなると自分では作れないのが残念だなぁ。キミはあれだけ働いているのに、よく模型を作る暇があるよね。
僕は仕事か模型かゲームしかやってないですから(笑)。
それはいい人生な気がする……。それに消費しているだけじゃなく、ちゃんとクリエイターとして世の中に発信しているもんね。デザインを発表して、それが商品になってそれを自分で買って作って楽しんでって……。
永久機関です(笑)。
GNドライヴだね(笑)。
今日はダブルオーのラフをいろいろもってきたんですよ。
青いダブルオーとか懐かしいね(笑)。これは黒いガンダムに憧れて描いてもらったんだけど、結局主役に見えなかった。ダブルオーは当初、エクシアの発展系で考えていたから、プロポーションはもっとエクシアに近い形だったんだよね。それをもっと細身で贅肉を削いだ形にしたいっていう話になって、パンクラスの船木誠勝選手をモデルにしようってことになったんだよね。
途中のラフでは、顔まで細くなっちゃったのもありましたね(笑)。
そうそう(笑)。初期段階は線が多いんだけど、これは模型用を想定して多めに描いてもらったんだよね。そこから、いかに作画に必要な線、立体を表わす線だけを残していくかっていう基準だった。
メカとしても、純粋な進化の形としてシンプルになり、線が整理されていくのは正しい流れですよね。
無駄な線をはぶいて、それでもデザインがわかるようにっていうことをしつこく言ったよね。で、それに巻き込まれた寺さん(寺岡賢司氏)が怒ると(笑)。でも言うだけ言ってすっきりして帰ると、翌日には線を減らしたティエレンの設定画をもってきてくれるんだ。まぁ結局、ティエレンのディテールが減るとさびしいって、作画のみんなは元の設定で描いてくれたんだよね。
線を減らすとティエレンらしさも減ってしまいますよね。
しかし完成までに、こんなにラフがいっぱいあったんだね。とくに海老川君に発注するときは、変なことばかり言っているからかな(笑)。
キミに発注する場合は、アバウトで幅のあることを言ったほうが、面白いデザインが出てくるんだよ。最初は「エーッ」って顔するんだけど、1週間ぐらいすると、すごくいいデザインが上がってくるパターン(笑)。海老川君のことは古くから知っているから、毎回このパターンで発注するんだけど、周りの人は「監督ヒドイ!」って顔をするんだよ(笑)。でもそういう発注の仕方をすると、想像していた以上ものが上がってくるから面白いんだ。そういう意味では、実直・堅実な柳瀬君と、海老川君のコンビは、うまくバランスが取れているんだって感じるね。
海老川兼武(えびかわ・かねたけ)
メカニックデザイナー。『ガンダム00』では、ガンダムエクシア、ダブルオーガンダムなどのソレスタルビーイングメカを中心に担当。他に『ヴァントレッド』シリーズや『フルメタルパニック!』シリーズなどのメカデザインを手掛けている。
GN-0000+GNR-010
ダブルオーライザー
ダブルオーガンダムと、支援機であるオーライザーがドッキングした形態。ダブルオーガンダムはかねてツインドライヴシステムの不調が指摘されており、これを支援機によって調整するという、急場しのぎの解決策がとられた。だがロールアウト直前の実験では、粒子生産量、粒子放出量とも、通常の290%を超えるという恐るべき数値を記録している。それゆえ艦船や要塞をも両断する巨大ビームサーベル、ライザーソードなどが使用可能になるなど、モビルスーツの常識を覆す性能を発揮した。だが本機の目的は戦闘能力だけではなかった。イオリアは、ツインドライヴのトランザムバーストで生み出される高濃度GN粒子によって、人類のイノベイター化を促すことを目指していた。つまり、ダブルオーライザーは人類を革新に導くガンダムだったのである。
■設定画 ダブルオーライザー