イラスト/海老川兼武

宇宙船ソレスタルビーイング内に群がる地球外変異性金属体

水島

いよいよG-ROOMSも最終回。今回はぜひ劇場版を観てから読んでほしいね。

海老川

ちょうど公開時期ということで、劇場版のネタがいいなと思いまして。GN-XIVに擬態したELSが、ソレスタルビーイング号の内部に群がってくる様子を、カメラが捉えたシチュエーションにしました。前回の水島監督と鷲尾さんとの対談で、エフェクトやモニターの要素をてんこ盛りにして欲しいというリクエストをいただいたので(笑)、このあたりが落ち着きどころかなと。

水島

いかにも海老川君らしいチョイスだよね。

海老川

本当は最終回ということで、ガンダム系のクアンタにしようかとも思ったんですが(笑)。前回(第8回)のダブルオーライザーのほうが最終回っぽいですよね。本当はもうちょっとG-ROOMSが続くと思っていたので、ガンダム系はもっと後にしようと思っていたんです。

水島

たぶん、今後も描ける機会が来ると思うから、あまり最終回を意識した絵じゃなくていいんじゃないかな? それにしてもELS GN-Xかよ!っていう気はするなぁ(笑)。まぁエイリアン好きの海老川君らしいよね。

海老川

個人的にはGN-Xも描きたかったので、全部の要素を満たすのはこれかなと思いまして(笑)。実はELSのデザインもやってみたかったんですけど、たぶんエイリアンとかベタベタなデザインになっていたと思います。

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水島

ELS自体は、SF考証も合わせて寺さん(寺岡賢司氏)だからね。まぁキミの場合、描きたいっていっても、担当した仕事が終わらなかっただろう(笑)。

海老川

ええ(笑)。でも、寺岡さんの描かれたELSはとても独創的な形状ですごいですよね。

水島

それは寺さんにお願いする以上、ある程度想定していた部分だからね。しかも「3Dだよ」っていったら、ちゃんと考えた形にしてくれる。もともとMS対MSという図式はガンダムでは必須の要素だから、ELSがMSに擬態することは外せなかった。じゃあMSに擬態するんだったら、どんな組成の生命体になるんだろうと考えたとき、同じ金属系だろうと。そこからなるべく生物的ではない、無機質でオブジェみたいなデザインが導き出されたんだ。
そんなオブジェみたいな存在が自らの意思で人型に変わるっていうことは、ELSが「相手を理解していますよ」っていう主張なんだ。それを明確にする意味でも、ELSがMSに擬態するっていうのは重要な要素になっている。でもよく見ると、ディテールが違ったりするんだよね(笑)。

海老川

ELS GN-Xは、中谷誠一さんのデザインなんですよね。

水島

そうだったね。GN-Xと変化をつけたいと提案があったんだ。擬態の度合いにもよるけど、大きく形状は変えられないので、抑えた方向性で変化をつけてもらって。

海老川

面白いですよね。完全に擬態していない部分は、細かいディテールが埋まっていたり、内側のディテールを模倣しきれなくて結晶体になっていたり。

水島

ほかにも全体的に丸くなっているよね。GN-XとELS GN-Xが戦うと判別しづらいと思ったけど、紫色の粒子を噴出しているから見分けがつくかな? 実は当初、全体をグレーにするっていう案もあったんだけど、あまりよくなくて、GN-XIVの色を結構残してもらったんだよね。だから動きが速いと判別するのが難しい。劇場へ観に行く人は、粒子の色で判別してくださいね。あとELSは音も発しているから、わかると思うな。

海老川

基本的に動きが早いんで、陣営分けは粒子色で見るのがおすすめです。

水島

GN-XとELS GN-Xがグルングルン回りながら戦うシーンもあるからね。これで予告のときに話題になった「紫の粒子」の理由がようやく公開できたね。

海老川

紫の粒子が敵の攻撃だっていうのは、なんとなく伝わっていたみたいですね。

デザインの融合が世界観に深みを与える

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海老川

最終回は自分のデザインしたMSじゃなくて、中谷さんがデザインした物を描くっていうのも面白いですよね。

水島

『00』らしいよね。本当に集団作業だったし、ある意味、みんなでパスを回し続けるみたいな作り方だったなぁ。

海老川

だれがなにを担当する、っていうのも決まっているようで、決まっていなかったですしね。

水島

状況を見てシャッフルするとか、分担を決められたからね。そこは非常にやりやすいメンバーで、信頼感のある関係が築けたからできたことだと思うな。

海老川

GN-XIVも、アヘッド的なイメージがありますしね。基本的には人革連の科学者がアヘッドから左遷されてきて作っている……というイメージです。寺岡さん的には人革連出身の若手が作っていて、テラオカノフ技師は勇退しているらしいです。

水島

テラオカノフ技師って……そんなキャラクターは登場してないぞ(笑)。

海老川

プラモデルの解説書に登場していて、もう寺岡さんの愛称になっていますね。

水島

ノフ以外、日本人じゃないか!(笑)

海老川

(笑)。GN-XIV自体は、パトリック機とアンドレイ機が指揮官機という扱いで、ある程度、個人の好みで武装を換装できます。一般用は指定されたセットがあって、そこから選択するんですが、ちょっと変わったタイプもいるので注目して欲しいですね。基本的なセットは5種類なので、実はそれほど多くはないんです。

水島

1形態ごと、印象に残るようなアクションはさせているよね。

海老川

二丁バズーカは、あまり目出たせないようにと思っていたんですが、結構印象に残りました。絵コンテでも、「このGN-Xはこの装備」という指示が全部入っていますしね。

水島

そこはアクションアニメーターの寺岡巌さんに、絵コンテを描いてもらったところだからね。コンテであれだけ描き込まれていると、作画側は絶対手を抜けなくなる。絵コンテの段階でアクションの完成度が見えているから、そのレベルから落とさないように作るっていうプランが立てやすいんだ。

海老川

基本的にガンダムやブレイヴはスーパーメカでしたが、GN-XIVも地味に活躍してくれました。

水島

ブレイヴは予想以上に無双になっちゃったからね(笑)。でもELSのことを考えたら、あんなに強くてもアッという間に押されちゃうぐらいだから。まぁブレイヴにしろ、ガンダムにしろ、パイロットの機微みたいなものを、MSの強さや動きで表せたんじゃないかな。

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海老川兼武

海老川兼武(えびかわ・かねたけ)

メカニックデザイナー。『ガンダム00』では、ガンダムエクシア、ダブルオーガンダムなどのソレスタルビーイングメカを中心に担当。他に『ヴァントレッド』シリーズや『フルメタルパニック!』シリーズなどのメカデザインを手掛けている。

GNX-803T
GN-XIV

地球連邦軍の新たな主力モビルスーツ。フレームや機体構造をはじめ、GN-Xシリーズの系譜を受け継ぐ機体だが、イノベイドから得た技術を積極的に取り入れたことで、大幅な性能アップを実現。アヘッドがアロウズの起こしたスキャンダルによって退役したことで、結果的にその技術をも継承することになった。指揮官機と量産機が存在するが、基本的に両タイプとも性能は共通で、武装のラインナップが異なる。指揮官機はパイロットの好みに応じて、様々な武装を組み合わせることができるが、一般機はある程度固定されたパッケージの中から選択することになる。

指揮官機

■設定画 指揮官機

量産機

■設定画 量産機

ELS

地球外変異性金属体。通称ELS(Extraterrestrial Living-metal Shapeshifter)と呼ばれる。あらゆるものと融合する特性をもち、MSや人に擬態する。

ELS

ELS GN-X

MSを理解したELSが、GN-XIVに擬態した姿。紫の粒子を発し、GN-XIVに匹敵する戦闘能力をもつ。一見するとGN-XIVそのものだが、細部はELSの金属的な特徴を残している。

ELS GN-X
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