この企画もメインデザイナーが一巡して、いよいよアニメーター西井正典さんの登場です。描いてみていかがでしたか?
そうですね。まず何をどう描くか? ということで悩みました。 デザイナーさんは企画の成り立ちからデザインに携われているわけですけど、作画の現場の立場からするとアレンジを勝手にやるわけにはいかない難しさもあります。
西井さんは元のデザインを尊重されますよね。デザイナーにとっても、凄く嬉しいことだと思います。
そこで、ものすごく王道なんですけどOガンダムを選びました。
こういった王道なチョイスは、実はデザイナー陣だとなかなか出てこないんですよ。この企画に、アニメーター陣にも参加してもらいたかったのは、ギミックやデザインだけではない視点から世界を描いていただきたいという意図があるんです。そもそも企画の趣旨は、『機動戦士ガンダム00』の世界の一瞬を切り取ること。1つのシーンでドラマを語ろうという趣旨なので、シチュエーションを描くという点においては、デザイナーよりアニメーターのほうが慣れているんですよね。 さて、今回のイラストはOガンダムとアンフということで、ファーストシーズンの第1話を想像させますね。
ええ、同じテスト段階ではあるんですが、実は第1話とは異なるシチュエーションです。第1話以外にも、戦闘試験が行われていたというシーンです。刹那を救ったとき、Oガンダムはビームガンを使っていましたが、あの時代でGNドライヴを積んだモビルスーツならば、ビームサーベルのみでも十分戦えるはずですよね。ビームサーベルの性能実験として、武力介入を別に行ったというシチュエーションです。
外伝では、何度もテストを重ねているという話だし、可能性としてイメージが膨らみます。夜っていう状況もドラマチックですよね。
ガンダムという作品は、真昼の戦闘が多いんですけど、夕景とか夜は絵的に映えるんですよね。透過光があったり、爆発が起こったりとか、画面が暗いほうが見栄えがいいんです。
巨大なものは、必然的に下からライトを当てることになるんで、巨大感が一層引き立つんですよね。モビルスーツの襲撃があれば投光機で光を当てるだろうということも想像できますし。そういう意味では、ナイトシーンは絵として映えるし、面白いですよね。
巨大なものが夜に出現するっていうシチュエーションは、不気味で存在感があっていいですよね。それに加えて、今回、ナイトシーンを選んだ理由にはGNドライヴもあります。『00』世界のガンダムは光りモノがたくさんあるので、あえて暗いシチュエーションのほうが合う場合もあると思うんです。
その雰囲気は出ていますよね。またビームサーベルがこれほどディテールが濃く見えるっていうのは素晴らしいです。動いている本編中だと、なかなかこういうシーンは見せにくいんですよ。特に『00』はストップモーションをあまり使っていないので、すごく新鮮に映ります。
自分の中で思うガンダム像みたいな部分を、ちょっと絵にリスペクトさせている部分もありますね。大河原邦男さんがデザインしたという意味も含め、Oガンダムは象徴的な存在だと思っていますので。
そこはOガンダムを発注したときに抱いていた僕の気持ちと近いですね。せっかくガンダムに携われるんですから、リスペクトとしてRX-78ガンダムのような機体を作品に出したかった。しかもそれを作品世界で最初のガンダムと名のつくモビルスーツにしたかったので、そうお願いしたんですよね。もともとGNドライヴのコーン等の記号部分は別の形状で、あとで変更していただいたのですが、まったく違和感がなく仕上がっているのはさすがだなと思いました。
西井さんのお名前を意識したのは、劇場版『サイレントメビウス』(91年)の頃なんです。今回はメカ作画監督として入っていただいたんですけど、もちろんキャラクターも描かれる。僕らぐらいの年齢の業界の人間からすると、「すごい人が入ってくれた!」って驚きますよ。
いえいえ、年の功なだけですよ(笑)。
大貫健一さんとふたりで、スタジオの空気を変える存在でした。ベテランのすごさを見せてくれたというか。千葉(道徳)君をはじめ、みんな「西井さん、すごい」って感じていたんですよ。今回もかなりの話数をお願いしていますよね。
全話数の1/5ぐらいじゃないですかね。
では、ほとんどのモビルスーツは描かれているんじゃないですか?
いえ、Oガンダムもそうですが、ナドレも描いていないですね。逆にセラフィムは3回出ているんですが、全部私が担当した回です(笑)。
セラフィムは変形シーンもすごくよかったですよね。
あれは原画を担当していただいた塩川貴史さんのお力ですね。
たしかファーストシーズンの第3話もご担当されていますよね。あのティエレン飛行型の超デザインが登場したエピソード(笑)。
あれはすごかったですね(笑)。
寺さん(寺岡賢司氏)は、あのあと、タクラマカンでも(ファーストシーズン第15話)にも飛行型を使うって言っていたら、「あれはアニメーターさんが大変だ」って、頼んでないのに高機動型のB型を描いてきたんですよ(笑)。僕がコンテで描いた飛行型の旋回シーンを見て、よほど危険と思ったらしくて……。第3話は、ちょうど第1話、第2話でミリタリー色を押し出していたところから、ちょっと加速させた話ですよね。『ガンダム』は、どこまでやっていいのか、僕も迷いのある段階でコンテを描いていて、ちょっと模索し始めたエピソードでした。
西井正典(にしい・まさのり)
アニメーター。AICやサンライズなどの数々の作品で、原画、メカニック作画監督を担当。ガンダムシリーズでは、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』でも作画監督として携わる。『機動戦士ガンダム00』では、ファーストシーズン第3話、第8話、第13話、第18話、第23話、およびセカンドシーズン第3話、第8話、第14話、第19話、第24話で作画監督を担当している。
GN-000 Oガンダム
ソレスタルビーイングが開発した最初期のGNドライヴ搭載機で、初めてガンダムと名づけられたモビルスーツ。ガンダムの中では第一世代と位置づけられ、後に開発されるガンダムタイプの原型となった。西暦2300年代初期、極秘裏に実戦テストが繰り返され、その後はソレスタルビーイングの下部組織によって管理されていた。だが、イノベイド・アロウズとの総力戦において、大型GNコンデンサー搭載型として実戦投入されている。後続のガンダムと比較すると、背面部のコーン状パーツが大型である。これはGNドライヴの技術がまだ洗練されておらず、補器類が小型化されていないため。一方、機体中央部にGNドライヴを搭載する機体構成やビーム兵器の装備など、ガンダムという機動兵器の基本形がすでに完成している。
■設定画 GN-000 Oガンダム
この企画もメインデザイナーが一巡して、いよいよアニメーター西井正典さんの登場です。描いてみていかがでしたか?
そうですね。まず何をどう描くか? ということで悩みました。
デザイナーさんは企画の成り立ちからデザインに携われているわけですけど、作画の現場の立場からするとアレンジを勝手にやるわけにはいかない難しさもあります。
西井さんは元のデザインを尊重されますよね。デザイナーにとっても、凄く嬉しいことだと思います。
そこで、ものすごく王道なんですけどOガンダムを選びました。
こういった王道なチョイスは、実はデザイナー陣だとなかなか出てこないんですよ。この企画に、アニメーター陣にも参加してもらいたかったのは、ギミックやデザインだけではない視点から世界を描いていただきたいという意図があるんです。そもそも企画の趣旨は、『機動戦士ガンダム00』の世界の一瞬を切り取ること。1つのシーンでドラマを語ろうという趣旨なので、シチュエーションを描くという点においては、デザイナーよりアニメーターのほうが慣れているんですよね。
さて、今回のイラストはOガンダムとアンフということで、ファーストシーズンの第1話を想像させますね。
ええ、同じテスト段階ではあるんですが、実は第1話とは異なるシチュエーションです。第1話以外にも、戦闘試験が行われていたというシーンです。刹那を救ったとき、Oガンダムはビームガンを使っていましたが、あの時代でGNドライヴを積んだモビルスーツならば、ビームサーベルのみでも十分戦えるはずですよね。ビームサーベルの性能実験として、武力介入を別に行ったというシチュエーションです。
外伝では、何度もテストを重ねているという話だし、可能性としてイメージが膨らみます。夜っていう状況もドラマチックですよね。
ガンダムという作品は、真昼の戦闘が多いんですけど、夕景とか夜は絵的に映えるんですよね。透過光があったり、爆発が起こったりとか、画面が暗いほうが見栄えがいいんです。
巨大なものは、必然的に下からライトを当てることになるんで、巨大感が一層引き立つんですよね。モビルスーツの襲撃があれば投光機で光を当てるだろうということも想像できますし。そういう意味では、ナイトシーンは絵として映えるし、面白いですよね。
巨大なものが夜に出現するっていうシチュエーションは、不気味で存在感があっていいですよね。それに加えて、今回、ナイトシーンを選んだ理由にはGNドライヴもあります。『00』世界のガンダムは光りモノがたくさんあるので、あえて暗いシチュエーションのほうが合う場合もあると思うんです。
その雰囲気は出ていますよね。またビームサーベルがこれほどディテールが濃く見えるっていうのは素晴らしいです。動いている本編中だと、なかなかこういうシーンは見せにくいんですよ。特に『00』はストップモーションをあまり使っていないので、すごく新鮮に映ります。
自分の中で思うガンダム像みたいな部分を、ちょっと絵にリスペクトさせている部分もありますね。大河原邦男さんがデザインしたという意味も含め、Oガンダムは象徴的な存在だと思っていますので。
そこはOガンダムを発注したときに抱いていた僕の気持ちと近いですね。せっかくガンダムに携われるんですから、リスペクトとしてRX-78ガンダムのような機体を作品に出したかった。しかもそれを作品世界で最初のガンダムと名のつくモビルスーツにしたかったので、そうお願いしたんですよね。もともとGNドライヴのコーン等の記号部分は別の形状で、あとで変更していただいたのですが、まったく違和感がなく仕上がっているのはさすがだなと思いました。
西井さんのお名前を意識したのは、劇場版『サイレントメビウス』(91年)の頃なんです。今回はメカ作画監督として入っていただいたんですけど、もちろんキャラクターも描かれる。僕らぐらいの年齢の業界の人間からすると、「すごい人が入ってくれた!」って驚きますよ。
いえいえ、年の功なだけですよ(笑)。
大貫健一さんとふたりで、スタジオの空気を変える存在でした。ベテランのすごさを見せてくれたというか。千葉(道徳)君をはじめ、みんな「西井さん、すごい」って感じていたんですよ。今回もかなりの話数をお願いしていますよね。
全話数の1/5ぐらいじゃないですかね。
では、ほとんどのモビルスーツは描かれているんじゃないですか?
いえ、Oガンダムもそうですが、ナドレも描いていないですね。逆にセラフィムは3回出ているんですが、全部私が担当した回です(笑)。
セラフィムは変形シーンもすごくよかったですよね。
あれは原画を担当していただいた塩川貴史さんのお力ですね。
たしかファーストシーズンの第3話もご担当されていますよね。あのティエレン飛行型の超デザインが登場したエピソード(笑)。
あれはすごかったですね(笑)。
寺さん(寺岡賢司氏)は、あのあと、タクラマカンでも(ファーストシーズン第15話)にも飛行型を使うって言っていたら、「あれはアニメーターさんが大変だ」って、頼んでないのに高機動型のB型を描いてきたんですよ(笑)。僕がコンテで描いた飛行型の旋回シーンを見て、よほど危険と思ったらしくて……。第3話は、ちょうど第1話、第2話でミリタリー色を押し出していたところから、ちょっと加速させた話ですよね。『ガンダム』は、どこまでやっていいのか、僕も迷いのある段階でコンテを描いていて、ちょっと模索し始めたエピソードでした。
西井正典(にしい・まさのり)
アニメーター。AICやサンライズなどの数々の作品で、原画、メカニック作画監督を担当。ガンダムシリーズでは、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』でも作画監督として携わる。『機動戦士ガンダム00』では、ファーストシーズン第3話、第8話、第13話、第18話、第23話、およびセカンドシーズン第3話、第8話、第14話、第19話、第24話で作画監督を担当している。
GN-000 Oガンダム
ソレスタルビーイングが開発した最初期のGNドライヴ搭載機で、初めてガンダムと名づけられたモビルスーツ。ガンダムの中では第一世代と位置づけられ、後に開発されるガンダムタイプの原型となった。西暦2300年代初期、極秘裏に実戦テストが繰り返され、その後はソレスタルビーイングの下部組織によって管理されていた。だが、イノベイド・アロウズとの総力戦において、大型GNコンデンサー搭載型として実戦投入されている。後続のガンダムと比較すると、背面部のコーン状パーツが大型である。これはGNドライヴの技術がまだ洗練されておらず、補器類が小型化されていないため。一方、機体中央部にGNドライヴを搭載する機体構成やビーム兵器の装備など、ガンダムという機動兵器の基本形がすでに完成している。
■設定画 GN-000 Oガンダム