メカニックデザイナー。アニメーターからメカデザイナーへ転身後、数々の作品でメカデザインを手がける。『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』シリーズのタチコマは、あまりにも有名。近年の代表作には、『コードギアス 反逆のルルーシュ』シリーズなど。また、SFやミリタリー、メカニックなど多ジャンルで造詣が深く、『機動戦士ガンダム00』ではメカデザインのほかに、SF設定として作品の構築に深く携わった。デザイン面では、ティエレン、アヘッド、スマルトロン、宇宙船ソレスタルビーイングなどのデザインを担当。
予告どおりの地味路線ってことで、今回はゲリラが使っていた水中用モビルアーマー、シュウェザァイだね。
まずはあまり目立っていないメカに光を当てたかったからね。今回は、水中用モビルアーマーの通常の任務というのがテーマ。実はこういう小さな軍港の片隅から、指令を受けて発進していく。おそらくどこかの軍港や戦艦に貼りつく目的で、偵察行動に発進するイメージ。
ここから直接潜って出撃するってことだね。
3機で組むというのが人革連のパターンだから、この機体の僚機は、すでに潜航しているはずなんだ。
この場所は北極かな? 水中用モビルアーマーが行動するのは、だいたいどのエリアになるんだろう。
ヨーロッパではイギリス、カナダからアメリカを警戒するんだろうね。他にも人革連の軌道エレベーターは海上にあるから、その付近に配備されている潜水艦軍もいるはず。イラストの部隊は北極海潜水艦軍っていうイメージで、軌道エレベーター潜水艦軍はこれより規模が3倍ぐらい大きいと思うな。この機体は攻撃型だけど、当然戦略型も存在したと思う。たとえば弾道ミサイルを積んだ、もっと巨大なモビルアーマーがいたんだろうね。
ファーストシーズンの第8話(「無差別報復」)で登場したときは、船の中から出現したよね。
あれはゲリラが使っていたということで非正規な活動だった。船に積むというのは水中用モビルアーマー本来の姿じゃないんだよね。
ちょっとユーモラスだったなぁ。
僕のデザインのせいもあるんだよ(笑)。顎が開いたり、手が長かったりさ。
「これどうやって戦うの?」って聞いたら、「手で引き込んで顎でガチンだよ」って言ったでしょ? でも顎でかみつく前に、手をソードで斬られそうだなって思った(笑)。
だから切られやすいように細くしてあるんだって(笑)。だいたいさ、水中で魚雷を使って戦わずに、組みつくところがかわいいからね。
そうそう、だから組みついて、魚雷を撃つっていうコンテに変えたんだっけ。
本来はモビルスーツ戦用じゃないからね。このモビルアーマーは対艦用。海上艦艇への警戒や護衛といった任務も含まれる。一番辛い任務は、敵の軍港の前で1週間ずっと待っていること(笑)。こんな氷の張った海の中でね。今は衛星があるから、そういう任務も減ってきているらしいけど、相変わらずアメリカはやっているみたいだね。
潜水艦乗りたくないなぁ……。
結構寒いみたいだしね。断熱はしてあるけど、沁みるように寒いって(笑)。潜水艦自体が、熱や音を発しちゃいけないものだからね。
1週間、あの狭いコクピットに立ちっぱなしか。明らかにエコノミー症候群になるなぁ。
きっとバイザーは脱げないだろうね。現実がわかっちゃうから。
人を部品のように扱うところは、さすが人革連。
だから待機中はずっとネットに接続して遊んでいるだろうね。トイレはチューブで済ましちゃうだろうし。寝るときは薬で強制的に眠らせる。だからみんな、モビルスーツに乗るのがいいなって思うんだよ。
搭乗時間が短いもんね。最後はみんなモビルスーツに乗りたいっていう気持ちもわかる。そりゃセルゲイもGN-Xに乗って「これはいいものだ」っていうよね(笑)。
広いし、ちゃんと椅子があるしね(笑)。
あれは副監督の角田君が、セルゲイになにかを言わせたくて考えたんだけど、結局「これはいいものだ」しか思いつかなかったんだ(笑)。石塚運昇さんの声で「いいものだ」って言えば、いいものに聞こえるよってことで採用した(笑)。
まぁ、モビルアーマー乗りもモビルスーツ乗りも任務はキツイけど、給料は相当いいと思うよ。
モビルアーマー乗りも給料はいいの?
一般兵よりは圧倒的にいい。モビルスーツは危険手当てを10倍ぐらいもらえるだろうけど、水中モビルアーマー乗りも5倍ぐらいもらえる。奥さんもうれしいよね。夫が帰ってこないで給料はいい。任務の内容は言えないけど、水中モビルアーマー乗りだって自慢はできるだろうね。でもみんな、心の中では「絶対乗りたくない!」って思っているだろうけど(笑)。
人革連側のコクピット描写は、「パイロットがヘルメットをかぶると無個性になる」「だれでもパーツになってしまう」というコンセプトがあって、顔を見せないデザインに挑戦してみたんだよね。でも実際にやってみたら、本当にだれかわからなくなってしまった(笑)。バイザーの中から目だけが見える……っていう描き方をやってみたんだけど、演出的に気をつけないと、ただ透けているだけに見えてしまったんだ。
でも挑戦したことの意味はあったよね。演出も作画も苦労して、暗くて狭いコクピットや、顔が見えないバイザーに挑戦したんだからね。
お褒めいただいてありがとうございます(笑)。監督としては、若干心残りな部分があるんだけどね。こだわってやってはみたんだけど、あまり波及はしなかった。結局それは個人のこだわりで、作品のこだわりとはちょっと違うのかなって思った。
本当にできるんだったら、『ボトムズ』みたいにやりたいよね。
人革連は『ボトムズ』に近いでしょ。キリコのゴーグルは、まさにこの系統だと思う。たださすがにピーリスはできなかったな。でも将来的にGN-Xが出ることが分かっていたから、タオツーのピーリスだけ、ヘルメットを変えても不自然ではないと思えたんだよね。
旧式機とガンダムの間にすごく幅があって、タオツー、GN-X、アヘッドと入れることができたからね。最初のコクピットを従来のガンダム風に寄せていたら、あまりバリエーションが出せなかったのかもしれない。
それに関しては寺さんも福地君も、全然ガンダムに寄せるつもりはなかったでしょ(笑)。
コクピットでいえば、ガンダムって30年の歴史があるでしょ。実際には狭くても、ある程度は広く作画されてきたという歴史がある。そういう常識を変えてしまうわけだから、意識の共有が一番難しかっただろうね。
ティエレンあたりは、カメラの入り方を固定しても面白かったかもしれない。ただ演出の範疇から逸れてしまう部分があったからね。これは全部、自分でコンテを描かないと徹底できないなって思った。でも心意気は何とか活かそうと思ってね。
まぁ僕らは好き勝手やったんだけどね(笑)。
まぁ寺さんと福地君に関しては、今までの作品が手をつけなかった細かい部分まで設定して、それぞれの勢力の違いをきっちり出そうとお願いしていたからね。でも、ちょっと使いきれなかったのが残念だった。
ちゃんと土台にはなったよね。あれだけ作り込んでいるからこそ、こういう絵が描けるという面白さもあるんだよ。
寺岡賢司(てらおか・けんじ)
メカニックデザイナー。アニメーターからメカデザイナーへ転身後、数々の作品でメカデザインを手がける。『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』シリーズのタチコマは、あまりにも有名。近年の代表作には、『コードギアス 反逆のルルーシュ』シリーズなど。また、SFやミリタリー、メカニックなど多ジャンルで造詣が深く、『機動戦士ガンダム00』ではメカデザインのほかに、SF設定として作品の構築に深く携わった。デザイン面では、ティエレン、アヘッド、スマルトロン、宇宙船ソレスタルビーイングなどのデザインを担当。
MAJ-03 シュウェザァイ
人革連が開発した水中用モビルアーマー。武装は魚雷発射管をはじめ、大型アームや頭部には顎のような格闘用武器が備えられている。西暦2307年時点ではすでに旧式となっており、テロ組織が活動に用いられるケースも見られた。スコットランド沖では、テロ組織ラ・イデンラがソレスタルビーイングの追跡を逃れるために使用したが、エクシアとの交戦で敗れ去っている。
■MAJ-03 シュウェザァイ
登場シーン
ファーストシーズン 第8話