メカニックデザイナー。アニメーターからメカデザイナーへ転身後、数々の作品でメカデザインを手がける。『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』シリーズのタチコマは、あまりにも有名。近年の代表作には、『コードギアス 反逆のルルーシュ』シリーズなど。また、SFやミリタリー、メカニックなど多ジャンルで造詣が深く、『機動戦士ガンダム00』ではメカデザインのほかに、SF設定として作品の構築に深く携わった。デザイン面では、ティエレン、アヘッド、スマルトロン、宇宙船ソレスタルビーイングなどのデザインを担当。
第5回は、『機動戦士ガンダム00』の骨組みになるデザインや設定をたくさん作ってくれた寺岡さん。で、今回はティエレンじゃないんだ?
うん、描かないよ。ひたすら地味路線。
小型モビルアーマー(MAJ-V34ジャーチョー)っていうチョイスが寺さんらしい(笑)。これは都市戦を描いているのかな。
小型モビルアーマーでの都市戦を想定した訓練シーンだね。モビルアーマー乗りになるために、狭い路地や階段があるところを走り抜ける訓練を積んでいく。訓練機だから、本当は目印になる赤い旗や青い旗を立ててないといけないんだけど、そのたありは電子的に処理しているのかもしれない。
パイロットが倒れているけど、被弾はしてないね?
階段から転げ落ちて、パイロットが気絶してしまった……っていうシチュエーションだから(笑)。
(笑)。間抜けなシーンなんだ? スリップの跡もあるから、無茶な運転したんだね。
「なにやってんだ。これだから若いのは……」って、年配の医療班が駆けつけてきて、コックピットから引きずり出されていると。
こういう小型モビルアーマーも、どんな編成で動くとかちゃんと考えていたよね。
人革連の運用では、モビルスーツ1機につき、小型モビルアーマーが必ず2機〜3機随伴して足元を露払いする……っていう編成だね。小型モビルアーマーも有人機1機に対して、無人機が2機っていう組み合わせ。小型モビルアーマーの役割は、対モビルスーツ用にワイヤーが張ってあったり、落とし穴があったりするはずだから、そういう障害を防ぐこと。他にもモビルスーツの火力は人間には向かないので、対人も任せられていたと思うし。モビルスーツと歩兵の間を、つなぐ形で小型モビルアーマーは発展していったんだろうね。
登場したのはファーストシーズンの第3話か。結構初期はこういう小型メカも出していたんだよね。
地上戦がなくなったから、出番がないんだよね。
まぁそういうミリタリーっぽさを、序盤で少しでも出せたのはよかったかな。お話は、だんだんミリタリーに適さない状況になっちゃったから(笑)。
そうそう。ほんの少しでも、世界観の厚みになったからよかった。歩兵まで目線が降りれば出番もあったんだろうけど、ガンダムは歩兵の話にならないからね。でも、ガンダムとアヘッドが空中戦をやっているときに、足元ではこいつらがウロウロしていたと想像してもらえれば。交通規制とかで、戦時では警察の手の及ばない部分も軍隊がフォローするからね。
きっと作業用にも向くよね。そういえばファーストシーズンの第3話で工兵車両って発注したら、工兵用の小型モビルアーマーを描いてきたでしょ?
モビルアーマーでいいじゃん、って思ったから(笑)。現用戦車と基本的に考え方は同じ。ローラーをつけたり、シャベルをつけたりして、いろいろな用途に転用されていると。モビルスーツが入る塹壕を掘るのも、工兵用モビルアーマーの役割だね。
タクラマカン(ファーストシーズン第16話)で、それっぽいことやっていたよね。
タクラマカンには高射砲部隊がいたんだけど、その前に工兵用モビルアーマーが地ならししたり、9mぐらいのモビルスーツ用塹壕とか掘っていたりしたはず。
カモフラージュとか、もうちょっといろいろやりたかったよね。
人革連では、小型モビルアーマー乗りってパイロットのスタート地点なんだよね。この気絶しているパイロットはまだ新人なんだけど、このあと何十時間も訓練を受けて、立派なモビルアーマー乗りになるんだよね。さらに将来的には、モビルスーツ乗りになる選択肢もある。基本的にヘルメットや服の装備はモビルスーツと共通だし、操縦系統も近いから、乗り換えにはあまり時間がかからない。現在の兵器のように戦車や飛行機に区分されているわけじゃなく、モビルアーマー乗りは、地上、宇宙、水中と、いろんな状況に対応できる。
インターフェース系を統一させて、短時間の訓練で乗り換えができるんだね。
で、モビルスーツ乗りになると、「あ、ちょっとコクピット広い……」って感動するんだよ。
さすが人革連のメカ。乗る人のことが考えられてない(笑)。
乗りこむシーンも地味だよ。このモビルアーマーなんて、ほふく前進の逆バージョンで、足からわっしわっしと入っていく。
モビルスーツが広いっていっても、ティエレンは立ち乗りでしょ。
18mサイズだと、あれぐらいじゃないと機械が入りきらないんだよね。コックピットを作るスペースがない。それにひとりで操縦するわけだから、手に届く範囲にすべての機械がないといけないからね。
そういえば、ティエレンは乗りこむシーンが絵にならないから、実は作ってないんだよね(笑)。
ティエレンの場合、ガンダム系と違って運動神経がないと乗りこめないぐらい乗り込みにくいからね。特に出るときが大変。ティエレンは中で気絶したら、クレーンで引っ張り上げないと救出できない。きっとそういう脱出用クレーンとかの装備は充実していたんだと思うよ。
寺岡賢司(てらおか・けんじ)
メカニックデザイナー。アニメーターからメカデザイナーへ転身後、数々の作品でメカデザインを手がける。『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』シリーズのタチコマは、あまりにも有名。近年の代表作には、『コードギアス 反逆のルルーシュ』シリーズなど。また、SFやミリタリー、メカニックなど多ジャンルで造詣が深く、『機動戦士ガンダム00』ではメカデザインのほかに、SF設定として作品の構築に深く携わった。デザイン面では、ティエレン、アヘッド、スマルトロン、宇宙船ソレスタルビーイングなどのデザインを担当。
MAJ-V34ジャーチョー
人革連が使用する車両型モビルアーマー。有人型のほかに、MAJ-V34AIという無人型が存在する。通常は、有人型1機、無人型2機の3機編成で1小隊を形成。ティエレン1機につき、1小隊が随伴する。武装は、85mm×50口径長 滑腔砲、20mm機銃。
■設定画 MAJ-V34ジャーチョー
初登場シーン
ファーストシーズン 第3話