イラスト/柳瀬敬之

シチュエーションの根底に流れるドラマ性とは?

水島

設定画というのはアニメーターや周囲の人に情報を伝えるためのツールだけど、そのディテールを使って緻密にイラストを仕上げる……っていう企画はなかなかないから、そういう意味で今回のイラストはとても企画に合ったものといえるよね。『G-ROOMS』のコンセプトに近い。

柳瀬

もし『機動戦士ガンダム00N』(電撃ホビーマガジン連載の模型企画)で作ってもらうとしたら、ちょっと大変ですよね。

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水島

さすがに無理じゃない?(笑)。これは18mのモビルスーツがあって、そこで広角レンズを使っているからこそこういう絵になっているけど、ミニチュアに普通の広角レンズを使っても同じようにはならないでしょう。
もしこの絵を立体化するんだったら、レンズ効果を考えてモデルやパーツの縮尺を変えて、もともとパース感のある状態にして撮影しないといけないんじゃないかな。何度もシミュレーションしないといけなくて、かなり時間かかると思うよ。

柳瀬

そういうことができるカメラがあるんじゃないかな? って思っちゃうんですよね。

水島

マイクロスコープとかを使えばできるかもしれないけど……。それと解像度の問題も出てくると思う。イラストだからこそできるシチュエーション、というのが面白いんじゃないかな。今回のイラストは、背後にあるテーマを感じさせるシチュエーションになっていて、個人的にはすごく好きだね。
ただ、人からアイディアをもらっているから、そのあたりを今後がんばろうよ。柳瀬君はマンガとか小説とかたくさん読んでいるんだから、もっとドラマ性を想像できるようになるといいと思うな。もっとワクワクできるように……。いろんなものを違った視点で見えるようになって、やりたい方向性とか明確になってくると思うよ。

柳瀬

がんばります(笑)。

水島

でも『00』が終わっちゃったら、同じ現場で働く機会も少なくなっちゃうからね。もうチェックしてあげられないよ(笑)。

柳瀬

じゃあそのときはチェック料をお支払いします(笑)。

水島

ギャラが頂けるなら出張でチェックさせていただきます(笑)

柳瀬

今回は背景描いていて楽しかったので、今後はできるだけ多く室内のイラストに挑戦したいですね。そもそもゲームでやっていた背景がロボットでも使えるっていうことで、アニメ業界に入れてもらった部分もありますから、背景は嫌いじゃないんです。

水島

でも本当にいい機会だと思う。実際、僕にも人生に何度かあったんだ、「ああ、そうなのか!」って気づく瞬間がね。たとえば、仲のいいアニメーターがポロッって言ってくれた一言がきっかけだとかね。漠然としていたことがつながる瞬間というか……。そういう自分が経験したことを、それを相手に与えられえるといいなって思う部分はあるね。

デザイナーなら最新のガジェットに触れるべし

水島

実は今回、柳瀬君にカメラを勧める際にカメラを調べていたら、もう短時間でズブズブとハマってしまって、自分でも買ってしまったんだ(笑)。ツィッターでちょっとつぶやいたら、EOS 5D Mark Ⅱっていう一眼の名機をいろんな人が進めてくれたんだけど、レンズが一本ついて32万円! とてもカミさんから許可が下りない(笑)。柳瀬君にだってだいたい15万円ぐらいので十分って話していたんだよね。

柳瀬

大幅に予算オーバーですね(笑)。

水島

散々迷っていたところに、ツイッターでEOS Kiss X4を勧めてくれる人がいたんだよ。実はその人って、RAM RIDER(ラムライダー)っていう凄いサウンドクリエイターで、ツィッターでフォローしていたんだけど、EOS Kiss X4がいいですよってリプライをくれて。更に、彼が撮ったムービーも見せてもらえて、それが素晴らしく良い感じで。もうこれは買うしかない! RAM RIDERに薦めてもらったんだし! って、決意して翌日には買ってしまいました(笑)。

柳瀬

そういえば、iPhoneも監督に勧めてもらったんですよね。

水島

iPhoneはデザイナーが持っていたほうがいいアイテムだからね。未来形ツールでしょう?

柳瀬

ちょっと目線変わりますよね。

水島

携帯とは一線を画すものだよね。実際に300年とか400年後に未来に、携帯電話はもっと進化していると思うけど、最新の技術を使ったものって、アイディアの源になるからね。可能なら実際に触って、使ってみたほうがいい。実はデザイナー陣でiPhoneを最初に使ったのは寺さんなんだよ。彼は普通の携帯は電話の延長線ってことであまり興味がなかったみたいだけど、iPhoneは真っ先に入手していた。メカツールとして魅力的なんだよね。そういう部分がデザイナー魂なんだなって思う。

水島

で、次回はその寺さんなんだけど、リクエストするどころかもう絵が上がっている(笑)。まったくリクエストを聞く気がない! まぁ、もともとこの企画を始めるにあたって、寺さんと福地さんには描きたいシーンがあって、それを描いてくれるという感じだからね。

柳瀬

ラフを見せてもらったんですが、正直さすがだなぁと思います。特にアニメーター出身ということで、キャラクターもきっちりと描かれていますし。
でも寺岡さんがどのような経歴を経て、あのようなデザイナーになられたのか謎な部分がありますね。次回は、寺岡さんという人物そのものについてお聞きしたいです。

水島

まぁ本人が語ってくれればね。「やだ」の一言で終わってしまうかもしれないな……。

文/河合宏之・写真/ドクトルF
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