イラスト/海老川兼武

様々なものを提示した『00』プロジェクト

水島

振り返ってみると、まぁ個性的なデザイナーがそろったよね。たとえば世界を含めてデザインするっていう意味では、寺岡さんと福地君にSF設定を踏まえた部分もお願いしたんだけど、海老川君はまた違う面白い個性をもっていた。ホビー好きっていう部分がデザインに活かされていて、なおかつわかりやすいからね。しかもそれがギミックとして活かされている。ダブルオークアンタなんて、まさしくそうだよね。

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海老川

メカ打ち合わせだと、寺岡さんが議長という感じでしたね。

水島

メカのことになると仕切ってくれるんだよね(笑)。寺さんは、それぞれのデザイナーの特色みたいな部分をわかっていてくれているから。土台のコンセプトは僕がこういう感じって伝えて、ガンダムに関しては黒田(洋介)君がアクションのモチーフになるようなギミックやアイディアを押さえて……。あとは物語上で必要になるものを、デザイナーの個性を加味してみんなで考えていく。寺さんは学級委員長みたいに、その割り振りとかやってくれたよね。そして一番、言うことを聞いてくれない(笑)。

海老川

唯我独尊ですね(笑)。

水島

「こんなの描いちゃった」ってパターンも結構あったなぁ。ティエレンは、その最たるもの(笑)。まぁ寺さんとは、本当に古い付き合いだから、それはお互い理解しあっているんだけどね。逆に福地君だと、彼の中にかっちりとした世界があるので、そこから何かを引きだしたり、共通のものを見出したりするために、打ち合わせを重ねていくという感じだったかな。寺さんと同じで、すごくいいアイディアをもっているので、それをどのように捕らえるのかというのが重要だったと思う。若手はもう基本的に力技(笑)。柳瀬君は真面目だったしね。

海老川

さしずめ僕は『00』メカデザイナー陣の良心といったところでしょうか?

水島

それはキミの希望じゃないか(笑)。デザイナーに良心なんてなくていいよ。デザイナーはジャンプしてこそデザイナーだからね。
鷲尾君はもう、鷲尾ワールド。こっちが意図している方向にまったく行かなくて、伝わり方が面白かった。(笑)。間違いなく天然です。あとはネーナ好き過ぎるぐらいかな。

海老川

(笑)。

水島

まぁみんなデザイナーとして相当気を吐いたよね。

海老川

本当にやれてよかったです。

水島

『00』はベースの時点でラッキーだった部分もすごくあるんだけど、みんなの結束力が立体物やイベントに結びついて、世の中にいろんなものを見せられた。G-ROOMSとか『00N』(電撃ホビーマガジン)みたいなメインスタッフがこれだけ参加する連動企画もはじめてでしょう? それにバンダイも僕らも楽しんで出来たこともの大きかったな。

海老川

ガンプラは切っても切れないコンテンツですよね。

水島

確固たるジャンルを築いているガンプラの中で、まだまだ新しいことをやろうという意識が高いからね。そこが現場とマッチングしたのが幸せだった。そのあたりは、僕ら外様のチームが持ち込んで、一番プラスになった要素なんじゃないかな。
特にバンダイで一番キーマンになってくれたホビー事業部の馬場(俊明)君が、『SEED』のときに設定制作としてサンライズに出向していて、どういう会社かを理解したうえで、僕ら新しいチームとつきあってくれたのは大きかった。

海老川

最初にエクシアのプラモが届いたときなんて、うれしいなんてもんじゃなかったです。あれはパッケージも描かせてもらいましたし。

水島

キミはチームの中でも一番模型に対して愛があるし、自分のデザインしたものが形になっていくのは本当にうれしいだろうね。でもこんなにラインナップが増えるとは思わなかった。押入れにもう入らない(笑)。

海老川

立体物でいうとROBOT魂もよかったです。

水島

ちょうどセカンドシーズンを期に、コレクターズ事業部の立体物がMS IN ACTIONからROBOT魂に変わったこともすごくラッキーだった。そのタイミングで、いい機会だからってコレクターズ事業部ともガッチリ組ませてもらったんだよね。

海老川

ROBOT魂シリーズの第一弾が『00』ですからね。今度発売されるクアンタも、すごく完成度が高いんですよ。

水島

さかのぼってファーストシーズンのMSも、ROBOT魂で出して欲しいな。まずはティエレンで。いつかきっと『ダイガード』も作ってくれると信じている!

海老川

アピールしておくべきですね(笑)。

G-ROOMSを総括する?

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海老川

異端な回が1回ありましたね(笑)。

水島

なに、それを言いたいの?(笑)

海老川

実は鷲尾さんのあとは、すごく緊張するんですよ。「なんだ、海老川、普通だな」って言われそうで……(笑)。鷲尾さんはあのネーナのイラストで「メインはスローネ艦です!」っておっしゃっていましたからね。やりきってしまうのは本当にすごいです。

水島

好きであそこまで行けてしまうのはすごいね(笑)。

海老川

前回(第8回)も、西井正典さんと中谷さんとかっこいい絵が続いた後だったので、とても緊張しました。

水島

まぁ振り返ってみると、最後の2回が異色になったよね(笑)。でもデザイナーのジャンルとしては正しいんだろうな。鷲尾君は女の子とおしりと胸だし、海老川君はメカとゾンビとエイリアンだからね。

海老川

今回、『i -wish you were here-』のときも、こういう絵を描いていたなぁって思い出しました。あと『鋼の錬金術師』の化石病もこんな感じでしたよね。

水島

なつかしいね。君と僕はそういうところで結ばれているのかな(笑)。今回の絵はなんか見たことあると思ったら、こういう構図やってたなぁ。

海老川

デザイナーが協力したといえば、劇場版のタイトルバックの絵も、デザイナーがそれぞれ描いたものですよね。あの絵もどこかで掲載してもらえるとうれしいです。

水島

タイトルバックの絵は、実はELSに関連しているからね。謎めいたイメージと、何かが起こっていくという雰囲気を醸し出している。

海老川

デザイナーが一人10枚ずつぐらい描いて、実はすごく手間がかかっているんです(笑)。劇中でも、刹那のフラッシュバックのシーンとかで使われていますよね。

水島

そうそう。みんなが描いてくれた絵の中からきれいなカットを12枚選んで、タイトルバックにしているんだよね。そういう部分も含めて内容は盛りだくさんなので、ぜひ見ていただきたいですね。

水島

さて、12回続いたG-ROOMSも、ちょうどアニメ制作の終了というタイミングで一端終了となりました。デザイナーとは一緒にご飯を食べに行くことはあるけど、こういう対談形式で話す機会はなかったので面白かったな。1枚の絵を題材にドラマを感じさせてくれる企画っていうのは、ガンダムの世界ならではだよね。こういう企画は今後とも継続して欲しいですね。

海老川

監督と対談しつつ、自由な題材で絵を描くっていう企画は、本当に貴重です。こんな企画ができるのもガンダムという、コンテンツの強さかなって思いますね。完全に終わりじゃなくて、またどこかでG-ROOMSのような企画に携れたらと思います。実はまだまだネタはあるんで、何らかの形で発表できれば嬉しいですね。

水島
海老川
またどこかでお会いしましょう!
文/河合宏之・写真/ドクトルF
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